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Day after the trip
SIDE STORY
- 甲斐編 -

●○●○●○●○  続、生理の話  ●○●○●○●○
(タイトルからわかる通り、所謂『女の子』ネタです。閲覧注意!)

 

沢田綱吉は、基本的には心身共に健やかな十四歳の少女である。
今となってはただひたすらに懐かしいあの世知辛い世界に生を受けてからこの方
大病を患ったことはなく、長きに渡り交際している持病もない、強いて言えば風
邪ぐらいには罹るが、デンジャラスでスリリングでエキサイティングな半生によ
って培われたその免疫力の高さから大半が鼻風邪程度で終わるため、どこからど
う見ても健康体そのものであった。
生物学上『女』である以上どうしたって避けては通れぬ月一の試練も、『ちょっと
腰周りが重い、かも?』といった具合に、自覚症状があるだけで周囲の女性と比
べたら至って軽く、鉄分の摂取量にも気を配ることのない、随分と幸せな生活を
送ってきたのだ。―――――これまでは。
予定日よりも少し遅れてやって来た『お月様』がにっこり笑顔と共に手渡してき
たネガティブな贈り物に、この日この時この瞬間、初めて大多数の女性の苦しみ
を知ることとなった綱吉は、上等な布団に懐いたまま力なく呻いた。

 


「……こ、腰が立たない。眩暈がする、気持ち悪いぃぃっ」


「綱吉殿、すぐに薬湯を用意させます故、今しばらく堪えて下され!」


「や、俺薬効かないし。そしてなぜ此処に居る真田幸村!!

 


頭まで被った掛け布団の隙間から容赦なく睨(ね)め付ければ、枕元に平然と腰
を下ろしていた幸村が、その完全無欠のジャニ顔をきょとりとさせながら、『悦殿
にこの熱き胸の内を切々と訴えましたところ、快く招き入れて下さいましたが』
と言った。
以前から怪しい怪しいと思ってはいたが、どうやら彼女は、『茶々姫を国内に留め
隊』―――――別名、『茶々姫を手頃な武将とくっつけ隊』の中心人物らしい。
信玄公の養女になりはしても、こちとら国を負って外に嫁ぐつもりなど毛頭ない
のだが、ここまで明け透けな行動に出なければならぬほど、武家社会における良
家の子女というものはとにかく政治的利用価値が高いのだろう。
色々な意味で堪らなくなった綱吉は、くしゃりと顔を歪めてから一人さっさと掛
け布団を被り直した。
夏の暑さを思えば自殺行為でしかないが、身体の表層部分は火照っていても、芯
はと言えばいっそ見事なまでに冷え切っている―――――経血量に比例するかの
ように悪化していく症状を前に、綱吉に余裕など残されてはいなかった。

 


「お前の相手なんかしてられないんだよ。さっさと帰れ。とにかく今は休みたい
んだ、頼むから……」


「……しかし、斯様に苦しんでおられる綱吉殿を置いて一人鍛練に励みましても、
とても身に入りませぬ。薬師が駄目なら医師を、医師が駄目なら祈祷師を呼び立
てます故、どうか自暴自棄にはなられますな」

 


布団越しに届く篭もり気味の声に対し、綱吉が『祈祷で生理痛が止まれば世話ね
ーわ』と毒吐くと、すぐ傍で肩を落とす気配がした。

 


「―――――某に、何か出来ることはありませぬか。粗忽者故、女子の心身の機
微にはどうにも疎いのです。出来る限りのことは致します故、どうか、どうか」

 


頭の中の大切な何かが、瞬時に焼き切れた。
眩暈がするほど激しく、けれども甘やかな不可視の閃光に当てられ、訳のわから
ぬまま嗚咽が洩れる。
まさか、このタイミングで己が泣き出すとは思わなかったのだろう―――――彼
はぎょっとし、いっそ甲羅にも見える掛け布団を慌てて引き剥がした。
そして、顔を伏せたまま胎児のように背を丸めている己へと躊躇いながらも手を
伸ばすと、小刻みに震えるその背を、あたかも幼子を宥めるかのように繰り返し
撫で始める。やべ、ソレ気持ち良い。

 


「つ、綱吉殿、如何されたのです!もしや、某が何かっ」


「……あぁ、したな。それも取り返しのつかないことだ。ホルモンバランスが崩
れて情緒不安定になってる時に、なんだってまたそんなこと言うんだよっ」


「も、申し訳」


「今更謝るぐらいならキッチリ手ぇ動かせや」

 


謝罪の言葉を受け付けずに問答無用で彼の膝の上へと乗り上げた綱吉は、男の膝
の硬さにげんなりしながら、反面、ふらつく身体を支えるべくとっさに自身の腰
裏へと回された大きな手から伝わる温もりにうっとりした。
洒落にならぬその体勢に、彼は派手に動揺したが、乱れ髪が掛かる頬の白さを目
の当たりにして、それこそ洒落にならぬほど己が参っていることを思い出したの
だろう―――――始めこそぎこちなく動いていたその手は、一分も経たぬうちに
躊躇いを失くし、素敵に無敵な感じの力加減で己を慰める。
そうしているうちに、下腹部に居座っていた鈍痛も少しだけ和らいだ気がした。

 


「……綱吉殿は、その、…月のものが来ました折には、いつも臥せってしまわれ
るのですか?毎度毎度この調子では、御身体が持たぬのでは…」

 


気不味げな問いに、僅かに顔を上げながら、綱吉は薄く笑った。

 


「―――――いつもは、こんなんじゃないんだけどね。こっちに来てから起きて
られないほど酷くなったんだ。環境が変わったせいだと思うけど、これはないわ。
……まぁ、もっとも、子種を貰えなかった卵が使用期限切れで廃棄処分されてん
だから、よくよく考えてみれば身体に負担が掛かるのは当然なんだけど」


「は、廃棄処分!?何故そのようなことをっ」

 


『勿体無い』と、馬鹿正直に書かれた赤ら顔に、身の危険を感じるよりも先に呆
れてしまう。

 


「知らん。俺の方が聞きたいわ。なんだってまた女だけが問答無用で毎月毎月痛
い思いして畑耕さなきゃなんねーんだよ。全く以って理不尽だ。それに引き換え
男ときたら、腹ん中の揺り篭で丸まってる時から棺桶に入る直前まで当然のよー
に女に世話焼かれて生きてんのに図体がデカくなったとたん威張り散らしやがっ
て、とりあえず皆爆死しろっ


「……わかり申した。お辛いのですね」

 


真実を穿った発言に、瞬間的に上がったボルテージが急激な下降線を描く。
茫洋とした光を湛える飴色の目を気怠げに細めた綱吉は、彼の膝へと頭を預けた
ままの体勢で仰向けになり、ふいに目的を失った大きな手を自身の厚みのない腹
部へと導いた。
この大胆な行動には流石の彼も大いにうろたえたが、結局、それだけであった。
先程よりも格段に短い時間で意識を切り替えると、硝子細工か何かを扱うかのよ
うな柔らかな手付きで、下腹部を撫で始める。

 


「―――――幸村」


「……はい」


「お前は、変わってくれるなよ。根が真面目なお前のことだから、いずれ貰うこ
とになる嫁は、ちゃんと大事にはするんだろーけどさ」

 

 

 


何事かを口にし掛けた幸村であったが、しかし、実際には何も言わずに、どこか
挑むように笑って見せた。

 

 

 

 

 


END

 

一言 > 感情で動くことが出来るほど子供ではなくて、あえてその感情を口に
することが出来るほど大人でもない。ツナ様にも色々あるんです。


 

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