忍者ブログ
<<08/123456789101112131415161718192021222324252627282930/10>>
[592]  [591]  [590]  [589]  [588]  [587]  [576]  [575]  [574]  [573]  [572
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

~ 注意書き ~



この話は、

Day after the trip- 奥州編 -

のIFネタとなっております。
舞台はBASARA界ですが、本家キャラは面白いほど出てきませんの
で、それを許容することの出来る方のみ、しばしお付き合い下さい。



Day after the trip
- 奥州編 -

●○●○● もしも、ツナ様がうっかりオリキャラと絡んでいたら ●○●○●
- ⑪ -
(サブタイ、山神様の捕らわれ人。お相手は黒脛巾組の忍ですが、諸事情により、
大分忍らしさを失っております。絡め手ならぬ『かわし手』を得意とする厄介な
タイプで、そこはかとなくエロい御仁です。例の如く本番はありませんが、オリ
キャラが相手となりますので、閲覧の際は充分お気を付け下さいませ)

 

 

家の裏にある段々畑には、季節、昼夜を問わず様々な作物が実り、沢の上流には
海生生物を含む魚介類が、庭先では鶏の一家が好き勝手に駆け回っている。
柚子彦が、当初豚肉とは知らずに口にしたベーコンの味に衝撃を受けた関係で、
なんだかんだで牛肉と豚肉はすぐにサルベージすることとなったため、畑の傍に
建てた家畜小屋はいつだって盛況だ。
井戸こそないものの、拳一発で見事掘り当てることに成功した温泉もすでに活躍
しており、『囲い』の中に侵入してきた熊を首尾良く仕留め、その毛皮を手に入れ
ることが出来たため、筵だけで寒々しかった寝床も劇的に改善された。
こちらで生活するようになって、早十日―――――相も変わらず元の世界に戻れ
るような兆しはないが、同居人である柚子彦と話す以外全くと言っていいほど娯
楽がないことの他は、今のところ、何不自由のない生活を送ることが出来ている。
己は、本当に運が良かったのだ。
俺の人生まだまだ捨てたもんじゃないなと、その喜びを一人噛み締めていた時だ
った―――――酷く痩せ細った少年を拾ったのは。
厄介事の気配を敏感に察知し、一度は見て見ぬ振りを決め込もうとした綱吉であ
ったが、己にとっては忌々しいことに、その子供にとっては幸運なことに、発見
現場となったのは『囲い』の中―――――夢や妄想、幻などではない以上、今こ
の場で黙って立ち去ったとしても後日息絶えた子供の遺体と遭遇し、埋葬するこ
ととなるのはどのみち己自身なのだという結論に達したため、呆れるほど軽い身
体を抱えて家へと連れ帰ったのだ。
そして、『おやまぁ』などと緊張感のない声を上げてくれた同居人を尻目に、当て
布こそないものの、ここしばらく洗濯をしていないのかやたらと汚れている着物
を剥ぎ、大量の湯を使って土埃と垢に塗れた身体を繰り返し拭き清め、不恰好に
なるのを承知の上で柚子彦の予備の着物を纏わせた。
囲炉裏の傍に寝かせたのは当然として、敷布団代わりの熊の毛皮を譲り、この時
代にはまだ存在していないはずの半纏(携帯電話ストラップの小さな人形を犠牲
にしたことで調達することの出来た綿花と、柚子彦曰く『落し物』の中にあった
男物の反物が揃ったため、掛布団代わりに実用的ではない大きさの物を一つ、実
際に着る物を二つ作ってもらったのだ。貴方の働きには頭が下がります)まで提
供したことが功を奏し、その顔色は幾分か良くなったが、いっそ致命的と言える
ほどまでに栄養が足りていない身体に肉が付くはずもない。
柚子彦の話では、此処から最も近い場所にある、比較的大きな集落―――――以
前、一度聞かされた、御山の麓にある村の子供ではないかとのことだった。
傍に落ちていた寸胴型の籠から察するに、山神様のお膝元に足を踏み入れるとい
う禁忌をあえて犯してでも、食料を得ようとしていたと、そういうことか。
晴れもすれば曇りもするし、風も吹けば雨だって降る『囲い』の中で生活してい
ると忘れがちだが、初夏からの天候不順により、下界の乾きはピークに達してい
たのだ―――――もしかしたら、自分達が思う以上に状況は悪いのかもしれない。
ほどなくして目を覚ました子供に、自己紹介も兼ねて状況を説明し、まずは水を
差し出してみたところ、こけた頬も相俟ってぎょろりとした大きな目だけが悪目
立ちするその顔を驚きの色の染めた彼は、福々しさの欠片もない手でもって即行
で湯呑みを奪い、物の数秒で中身を全て飲み干した。
これで気が済んだかと思いきや、しかし、空になった湯呑みを茫洋と睨み付けな
がら、二、三度ほど己の様子を窺ってきたため、出入口の傍にある大きな水瓶の
中に満たされていた水を再び湯呑みへと注ぎ、御所望の二杯目を贈呈する。
そこでようやっとひと心地ついたらしい彼に、何か言いたそうな顔のまま、それ
でもキッチリ手だけは動かしてくれた柚子彦作の卵粥を提供すれば、これまた豪
快にがっつき―――――用意した全てを平らげた後、胃の辺りを押さえてぼろぼ
ろと涙を零し始めた。

ちょ、なぜに泣く!!?

 


「あぁ、ほら。あれだけ言ったのに勢いに任せて食べるから!しばらくまともな
飯にありつけなくて胃の機能が弱ってる状態でそんなことしたら、気分悪くなる
のも当然だろ。―――――大丈夫?吐けばすっきりするかな?」


「、…うぇ、え……っ」


「柚子彦さん、桶!」


「うーん、意地でも吐かないと思うよ。あと、泣いている理由は嬉しいからだと
思うな。稗も粟も入っていない白米や卵を食べる機会なんて農民にはないだろう
し、加え、この飢饉だろう?麓の水源も枯れていたとしたら、水だって手に入ら
なかったかもしれない。苦しかっただろうね」

 


その言葉を肯定するかのように、遅ればせながら『喜作』と名乗った子供が、涙
や鼻水という形でなけなしの水分を体外へと出しながら、激しい嗚咽の合間にぽ
つぽつと語り始めた。

 


「そ、この兄ちゃんが言った通り、食べる物、ぜ、全然なくて、……辛うじて採
れた作物も、年貢の不足分として、ほとんど持ってかれちまったんだっ。川は、
もともと水量は多くなかったから、すぐに干上がって、む、村の男衆が深く掘り
進めてみたけど、井戸も直に枯れそう、で。―――――身体壊してた年寄りがま
ず何人か死んで、小さい連中も、順に倒れていってる」


「うん」


「伊達のお殿様が倉を開いたって、風の噂で聞いたけど、いつも村に来る肥えた
お侍は『そんな物はない。自分達でなんとかしろ』って。村の大人は、水も食べ
物も、まず子供に回してくれてるけど、最近は何も食べられない日も、少なくな
くて、……あ、赤ん坊なんか、母親の乳が出なかったらどうしようも、ないしっ」


「うん」


「お、俺ん家も、母ちゃんの乳が出なくなって、夏に生まれた妹が死にそうなん
だっ。母ちゃんに、腹の足しになるならなんでも食べてもらいたくて、村から見
る御山はいつも青々してるから、行けば何かあるだろうって、父ちゃん達から御
山に入っちゃ駄目だって言われてたけど、此処に………っ」


「……そっか、大変だったね。その気概は買うけど、此処、君の尻の下を見てく
れればわかると思うけど熊も居んのよ。ちょっと無謀だったね。はい、顔拭いて。
せっかく将来男前になりそうな良い面構えしてんだから、手の平で乱暴に捏ねる
んじゃないよ。勿体無いだろ」

 


あらゆる汁でぐしゃぐしゃになったその顔を懐に入れてあった手拭いでそっと拭
った己をぼんやりと眺めながら、すっかり赤くなった鼻をすんすんと鳴らして呼
吸を整えることに専念していた彼であったが、そこでふいに何かに気付き、短く
声を上げた。
その視線の先にあるのは―――――己の着物?

 


「―――――姉ちゃんと兄ちゃんが着てる着物の生地、春に父ちゃんが社にお供
えしたのと同じやつだ」

 


その言葉に、柚子彦は『参ったな』とでも言いたげに僅かに顔を歪め、己はと言
えば、笑顔のまま固まった。
どうやら、実際に目に見える形で繋がった糸は、意地らしくも短絡的な御子様の
頭にもいらん閃きを与えてしまったらしい。
囲炉裏の上に吊るされた鮎の燻製、竈の傍に置かれた小さな調理台―――――そ
の上にある平笊にこれでもかと言わんばかりに盛られた卵と野菜、小窓から窺う
ことの出来る軒下に吊るされた漬物用の大根を順に見て異様に大きな目をギラギ
ラと輝かせた彼は、掛布団代わりの半纏を跳ね除けたかと思うと、その直後、額
を擦り付けるようにして土下座した。

 


「神様、お願いします!!妹を助けて下さい!!!」

 

 

 


畜生、そうくると思ったよ!!!

 

 

 

 

 

END
 

PR
忍者ブログ [PR]

design by AZZURR0