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~ 注意書き ~



この話は、

Day after the trip- 奥州編 -

のIFネタとなっております。
舞台はBASARA界ですが、本家キャラは面白いほど出てきませんの
で、それを許容することの出来る方のみ、しばしお付き合い下さい。



Day after the trip
- 奥州編 -
●○●○● もしも、ツナ様がうっかりオリキャラと絡んでいたら ●○●○●
- ⑳ -
(サブタイ、山神様の捕らわれ人。お相手は黒脛巾組の忍ですが、諸事情により、
大分忍らしさを失っております。絡め手ならぬ『かわし手』を得意とする厄介な
タイプで、そこはかとなくエロい御仁です。例の如く本番はありませんが、オリ
キャラが相手となりますので、閲覧の際は充分お気を付け下さいませ)
 
 
見覚えのある童を侍らせて帰宅を果たした己を見て、器用にも片眉を上げて見せ
た彼は、次の瞬間声を上げて陽気に笑い出した。
 

「なるほど、そうきたか!村人の暴動ばかり警戒してたから、この可能性には思
い至らなかったなぁ。そうだったね、彼等の中では俺達は山神様なんだった。す
っかり忘れてたよ」

「笑い事じゃありませんよ!俺がどれだけ居た堪れない思いをしたか!!」

「まぁまぁ。とりあえず、中に入ってもらったら?いらっしゃい、喜作。また会
ったね。隣の子は初めましてだね。俺は柚子彦。君の名前を聞かせてもらえるか
な?」

「……たず、です」

「たずだね。ようこそ、我が家へ。人柱として送り込まれた君達を受け取ること
は出来ないけれど、ひとまず歓迎するよ」
 

己以上の居た堪れなさにその身を縮込ませている御子様組を安心させるかのよう
に微笑んだ彼は、『人数が倍に増えたのなら、米ももう少し足さないとね』など
と言いながら枡一杯ほどの白米を掬い、もともと釜の中へと入れてあった物と一
緒に研ぎ始めた。
一連の遣り取りから察するに、どうやら、苛立ってはいないらしい―――――あ
る種の暴挙である此度の一件によって彼の態度が硬化することを何よりも怖れて
いた綱吉は、密かに安堵の息を洩らし、両の手に水入りのバケツを提げた己に代
わって魚籠を抱えてくれている喜作とたずを土間へと押し込んだ。
 

「喜作、その魚籠を柚子彦さんに渡したらたずと二人で囲炉裏の傍で適当に時間
潰してなさい。海老とイカの捕獲作業で身体が冷えただろ?生姜湯ならすぐに作
ってやれるけど、どうする?それともやっぱり水がいい?」

「しょうがゆ?」

「あれ、知らない?摩り下ろした生姜に蜂蜜混ぜて、お湯で割んの。甘いよ」

「飲む!たずも飲むだろ?」
 

『甘い』という単語にすぐさま反応して興奮気味に答えた喜作と、彼につられて
戸惑いがちに、けれども確かに頷いたたずを見て小さく笑った綱吉は、折り畳み
式のカラフルなバケツに満たされた沢の水を煮沸処理前用の水瓶の中へと移して
から、早速生姜湯作りに取り掛かった。
現代から持ち込んだ粉末生姜がまだ充分残っていたため、木匙一杯ほどのソレを
湯呑みの中へと入れ、たっぷりの蜂蜜を足し、柚子彦があらかじめ沸かしてくれ
てあった湯を注ぐ。
あっという間に完成した生姜湯を二人へと手渡した綱吉は、『熱いから気を付け
て飲みなさいね』と忠告し、凝り固まった肩周りの筋肉を解してから新鮮な海老
の下処理を始めた。
すると、研ぎ終わったばかりの米を竈へと移し、早々に炊き始めた同居人が、昨
日絞った菜種油を鍋の中へと大量に注ぎ入れながら、おもむろに口を開いた。
 

「―――――麓の村も、面倒なことをしてくれるね」

「……言い訳するようでなんですけど、俺、テメェが人間だってことはキッチリ
主張してきましたからね?」

「うん、わかっているよ。君自身に落ち度はない。……こうなったら腹を括るし
かないか」

「そうですね。とりあえず、水の問題を解決しないことにはどうにもなりません。
この傍を流れてる沢の水、どうやら『囲い』を跨いでしばらく行ったところまで
届いてるみたいなんです。かと言って村までは簡単に水を引けるような距離じゃ
ないんで、臨時の水場を作ろうと思います。竹でもなんでも使って水場はなるだ
け村に近付けるつもりですが、ある程度はあちらに頑張ってもらうしかないでし
ょう。いずれは村の中に新しい井戸を掘るつもりですけどね。もちろん、御山へ
の立ち入りは基本そこまで」

「……ギリギリ、かな。その時に間違っても御山を荒らさないよう、よく言い含
めておかないと」

「あちらだって生きるか死ぬかの瀬戸際なんです。自らの手で首を絞めるような
馬鹿な真似はしないでしょう。たぶん。……食べ物に関しては、少し試してみた
いことがあるんです」

「へぇ、なんだい?」
 

天ぷら用の野菜を手際良く切りながらの彼の問いに、綱吉は難しい顔で続けた。
 

「この『囲い』の中で育った野菜、もちろん外に出しても食べること自体は出来
たんですけど、改めて畑に植え付けた場合の成長率がどの程度か興味があるんで
すよね。『囲い』の中の特性が100%下界でも保たれるとは思いませんけど、
少しでも成長速度が上がれば、それだけでも充分彼等の助けになりますし。今は
全面的な支援が必要な時期ですけど、そもそも俺等には彼等を養う義務なんざな
いんです。自立が早いに越したことはありません。……でも、なんとか飢饉前の
生活を取り戻したところで、年貢の不足分として追加で取り立てられたら意味が
ない」

「そうだね。いざ戦となったら更に悲惨だ。伊達の御殿様に限ってこの状況で餓
えた民に負担を強いてまで自分から戦を仕掛けることはないとは思うけれど、相
手もそうだとは限らない―――――なけなしの備蓄の供出云々を巡って厳しい取
り立てが始るだろうし、敵軍が嬉々として乱捕りを始めたら命すら危ういからね」

「……ある程度は村の畑で作らせて、村人の生命線となる分の食料だけでもどこ
か別の場所で作った方がいいですかね?」

「参考なまでに聞くけど、どこにだい?」

「……御山の中、とか」
 

ふいに手を止め、互いに顔を見合わせた二人は、そっと視線を外して小さく嘆息
した。
 

「難しいですね。どちらにしても、彼等の生活を御山から完全に切り離すことは
出来ないのか……」

「そうとなれば、何がなんでも木々を無用に切り倒さなくても済む場所を見付け
ないといけないね。加え、これから作ることになる臨時の水場からそう離れてい
ない場所となると、少し厳しいかもしれないけれど」

「そうですね。でも、一度関わると決めた以上、やるべきことはやりますよ。そ
れが言い出しっぺの責任ですから。代わりと言ってはなんですが、彼等には別の
部分で動いてもらおうかと思ってます」

「……別の部分、かい?」
 

訝しげに繰り返した彼に、綱吉は肩を竦めて答えた。
 
 
 

「漬物とか、鮎の燻製とか、とにかく比較的日持ちのする物を俺が作り溜めして
たのは知ってるでしょう?今回のことがなくても、近いうちに山を下りて現金に
換えようと思ってたんです。それを彼等にお願いしようかなぁと。ついでに、と
言うかむしろコレが本命なんですけど、少しでも外の情報が得られればと思って」
 
 
 
 
 
END
 

一言 > 半引き篭もり生活の終焉。村での泊まり込みの作業が続いた時、ふと
した瞬間一人寝が酷く寂しく思えて、そのことに対して悶絶すればいいよ。
 
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