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~ 注意書き ~



この話は、

Day after the trip- 奥州編 -

のIFネタとなっております。
舞台はBASARA界ですが、本家キャラは面白いほど出てきませんの
で、それを許容することの出来る方のみ、しばしお付き合い下さい。



Day after the trip
- 奥州編 -
●○●○● もしも、ツナ様がうっかりオリキャラと絡んでいたら ●○●○●
- ⑱ -
(サブタイ、山神様の捕らわれ人。お相手は黒脛巾組の忍ですが、諸事情により、
大分忍らしさを失っております。絡め手ならぬ『かわし手』を得意とする厄介な
タイプで、そこはかとなくエロい御仁です。例の如く本番はありませんが、オリ
キャラが相手となりますので、閲覧の際は充分お気を付け下さいませ)
 
 
現在進行形で勢力を拡大している鶏一家であるが、その中で唯一、己や柚子彦と
いった人間の支配から逃れている存在がいる。
この『囲い』の中へと放り込まれた初日、チート畑に埋めた卵から孵り、己の手
の上で成鳥にまで育った印象深い雄鶏だ。
その一部始終に立ち会ったためか、常識を逸したレベルの暴力と圧倒的な恐怖で
もって一家を仕切っている彼も唯一己だけは一目置いてくれているようで、挨拶
のつもりなのか、朝と晩は必ず己の前に現れて二、三度羽ばたいてから寝床へと
戻って行く。
そこまでされれば情が湧くのも当然であるが、コンスタントに鶏肉を食べ続けて
いるにも関わらず彼が絞める対象にはなりえぬのは、『絆された』という理由を遥
かに超越した理由がある。
それは―――――。
 

「ちょ、おま、ダチョウじゃないんだからさ……」
 

―――――己の目線とほぼ同じ高さにまで迫った、その大きさである。
同じパックに並んでいた卵から孵った鶏は皆例外なく通常サイズであるというこ
とを思うと、もう引くしかない。
五日ほど前だったか―――――生ゴミをなんでも平らげてくれる鶏一家が雑食性
だということはわかっていたつもりであるが、日課の山中散歩に出掛けたその数
刻後、くたりとした仔狐を銜えて意気揚々と帰宅を果たした彼を見た時は、派手
に動揺したものだ(ちなみに、その仔狐は気絶しているだけであった)。
これ以上大きくなることはなさそうだが、こんな規格外生物をこのまま放置して
いたら、山の生態系が変わってしまうのではなかろうか。
 

「山神様の使役神にでもなったのかもしれないよ」
 

あっけらかんと笑うのは、言わずもがな、柚子彦青年、その人である。
 

「どうやら、御山に棲む動物の中には大型化する物も居るようなんだ。僕が見た
ことがある物だと、狐や狸、熊、猪に、……あと、櫟(いちい、と読む。絶賛調
教中の鷹のことだ)のお母さんとか。まだ対面したことはないけれど、この調子
なら小動物も大型化していそうだよね」

「……使役神云々はともかくとして、その種族の長みたいな存在ですかね?そう
いうことなら、万一接触した時は気を付けないと」

「そうだね。小動物系の長殿ならまだしも、熊と猪の長殿にはもう二度と遭遇し
たくないなぁ。長でなくともあの大きさだからね。普通の鶏と君に懐いている白
玉(卵時代の寡黙な愛らしさを忘れぬための措置である。え、現実逃避?さて、
なんのことやら……)との対比を目の当たりにすれば、熊と猪の長殿の怖ろしさ
は理解してくれるだろう?」

「あー、よくぞ御無事で」

「本当にね」
 

山の峰がある方向へと向き直って二礼二拍手一礼をした彼に倣って丁寧に頭を下
げた綱吉は、鶏小屋へと戻るよう白玉を促し、折り畳み式のバケツを抱え直した。
そして、食生活が豊かになって暮らしに余裕が出てきたためか、他二軒の補修に
まで手を出し始めた柚子彦へと改めて声を掛ける。
 

「柚子彦さん、水を汲みに行って来ます」

「あぁ、そうだったね。夕餉の支度をするには足りなかったんだ。重いだろう、
俺が行くよ」

「紳士対応ありがとうございます。でも、半月近く山暮らしをしていればいい加
減慣れるんで、その気持ちだけ頂いておきます。今日の夕飯は何にしましょう?」

「前に君が言っていた『てんぷら』がいいなぁ」

「了解です。水を汲むついでに海老とイカも獲って来ますから、椎茸とピーマン
と茄子とさつまいもの収穫は任せていいですか?」

「ご飯を炊く準備もしておくよ」

「お願いします」
 

天つゆで食べようか、いや塩も捨てがたい。
バーベキュー用に購入した車海老の大きさを思い出し、期待に胸を躍らせた綱吉
は、通い慣れた沢への道を進み始めたが―――――山肌を撫でるようにして吹き
上がってきた風から、ともすれば見逃してしまいそうなほど小さな違和感を感じ
取り、ふと足を止めた。
 

「……今、声が」
 

聞こえたような、気が。
それも、大人の声などではなく、不安と緊張を多分に孕んだ、子供の泣き声。
喜作には、『囲い』の中での出来事を―――――特に、チート畑のある家の場所
を不用意に話さぬよう言い聞かせてあったが、もしかしたら、周囲からの圧力に
耐えかねて話してしまったのかもしれない。
二つある気配はどちらも子供のもので、今回、大人は同行していないようだが、
同居人から正式な答を貰っていない今の状況で事を起こされるのは不味かった。
さて、どうしたものか―――――茜色が広がりつつある空を見上げた綱吉は、し
かし、すぐに頷き、相も変わらずうねっている山の斜面を下り始めた。
そして、つい先日、麓の村へと下りた己を出迎えてくれた同居人が一人佇んでい
た『囲い』の縁近くに、おろおろとする二人の子供の姿を見付け、傍らの木へと
手をついて思いきり脱力してしまう。
『ねぇ、本当に此処なの?』と、涙声で繰り返している少女に見覚えはないが、
動揺しつつも気丈に振る舞っているもう片方の子供を見間違えるはずがない。
たった一日ではあるが世話を焼いた、喜作だ。
『これほどの物があの村のどこに残されていたのだ』と本気で問い質したくなる
ほど美しい着物の不吉な『白』が、容赦なく目を焼いた。
 

「だ、大丈夫。姉ちゃんなら絶対俺達のこと見付けてくれる。山神様の子供に、
してくれる。お、俺達はどうなるかわからないけど、きっと村は助かるよ。だか
らたず、泣くなっ」
 
 
 

―――――二名様、不本意ながら自宅へと御案内。
 
 
 
 
 
END
 
一言 > 『囲い』の特性、追記。住人からの声掛けがあって初めて目晦ましの
効果は消える。ただし、住人の許可がなければ、基本的に『囲い』の中に入るこ
とは出来ない。一度『囲い』の外へと出てしまったら、過去、住人に招待された
ことがあっても同様です。当初、喜作が壁を越えて『囲い』の中へと入ることが
出来たのは、自然の摂理を無視したチート畑の存在を知らず、また、その動機も
利己的なものではなかったからだと思われます。
 
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