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内容はタイトル通り。

ありがちな世界観となっている関係で馴染みもあるかと思いますが、あくまで
オリジではなく他作品へのトリップを求められる方は、このまま何も言わずに
ページを戻して下さいませー。



ナルツナ子 IN RPG風異世界
- ⑧ -

 

 

結局、最低でも100、という要求は受け入れられ、長時間に渡る交渉の末、リ
コリスの球根は金貨六十枚で譲ることとなった。
残りの四十枚+αは、この街の高級住宅地にある屋敷(元は豪商の持ち物で、物
は良くてもそこそこの稼ぎがある程度では手が出せぬほど高価であることから、
長い間空き家だったのだそうだ。管理費がネックだったらしく、多少値引きして
でもその屋敷を売り払いたかった商業ギルドからはすぐに返事が貰えたらしい)
を現物で支給するということで片が着いた。
ナルトがそれで妥協せず、市場にはまず出回らぬせいで存在自体が極少数の者に
しか知られてはいないらしい白金貨を出す破目になっていたら、冗談でもなんで
もなくラザールは失踪していたかもしれない。
金貨六十枚は後日、現物支給の屋敷に関しては明日案内してもらうことを約束し
てギルドを出た二人は、Eランクの依頼の成功報酬と適当に狩った魔獣の素材を
売って得た金、そして細々したドロップ品を携えて茜色に染まった街を歩いてい
た。
冒険者生活初日にして小金持ち、リコリスの代金を受け取れば早々にセレブの仲
間入りを果たすこととなるのだから、幸先が良い。
大掛かりな補修を必要とする状態であれば話は別だが、宿屋に世話になるのもあ
と数日で済みそうだ。

 


「それにしてもナルトさん、悪いんだぁ。あの球根、苦労して手に入れた物じゃ
ないじゃないですか。ラザールさんのこと庇ってあげたくなりましたよ」


「一つ見せただけでそれが全てだと思い込んだあの野郎もかなり間抜けだけどな、
まだ他に六個も隠し持ってることを言わねーお前も相当だぞ?」


「纏まった数を見せると逆に値切られるかなぁと思いまして。球根一つであれだ
け揉めるんですから、どう考えたって、今日の依頼みたいにある程度の数を纏め
て納めることに対して付加価値を認めるような真似はしないでしょう。それに、
ギルドマスター程度が独断であれほどの額を工面出来るんです。相手を選べばも
っと搾り取れますよ」


「……俺なんかよりお前のがずっと怖ぇよ」


「まぁ、人聞きの悪い。女は殿方よりも幾分か現実的に出来ているだけですのに」

 


己の芝居がかった物言いに、一度渋い顔をした彼は、けれどもすぐに気を取り直
して笑った。

 


「ま、強かに生きることは何も悪いことじゃねーわな。それで、残りはどうする
つもりなんだ?みすみす腐らせるつもりはねーんだろ?」


「そうですね。とりあえず、例の如く冷凍保存するつもりです。ただ、それだけ
だと詰まらないじゃないですか。ナルトさん、医療忍術は応急処置程度にしか使
えないって言ってましたけど、薬学は結構踏み込んだところまで学んでましたよ
ね?万能薬云々の製造に独自に挑戦してみるってのも面白そうですよね」


「……本気で言ってんのか?」


「や、半分程度?でも、聞いたところによると、どうやらこんな御機嫌な世界観
でも都合が良過ぎる魔術やアイテムは存在しないみたいなんですよね。だから、
ゲームで言うところのポーション的な存在には俄然興味があるって言うか」


「まぁ、あって困るもんじゃねーのは確かだけど。―――――成分分析から入る
となるとかなりの数が要るぞ?」


「そうなんですよね。だからしばらくは球根集めに専念します。あ、ジネットさ
んだ」

 


視線の先では、すでに目と鼻の先にまで迫っていた宿屋の入り口にて夜間照明と
して使用する三脚の篝火の準備を進めていた女将が、人好きのする笑みを浮かべ
ていた。

 


「お帰りなさい。相変わらず仲が良いね。怪我はないかい?」


「見ての通りです。依頼も無事に達成したんで小金持ちになりました。今日の夕
食も食堂で頂きますね」


「毎度あり。掃除は済んでるから、そのまま上がってもらって構わないよ」


「そうですか?それじゃあ、お言葉に甘えて」

 


開店前ということもあって無人の食堂を抜けて階段へと向かった綱吉は、軽い足
音を立てながら八畳ほどの広さがある客室が幾つも連なる二階へと上がり、朝の
うちに連泊を希望しておいた部屋へと入ろうとしたが、しかし、木製のドアへと
手を掛けたところで短く声を上げ、背後に立つナルトの顔を仰ぎ見た。
圧倒的な鮮やかさを誇る一対の青が幾度か瞬きを繰り返したが、まずは己の言葉
を待つつもりなのか、それ以上の反応を示すことはない。

 


「―――――今思い出したんですけど、なんだってまた現金で統一しなかったん
ですか?」


「球根の対価のことか?」


「はい。いつまた此処を離れるかわからない身の上なんですから、宿暮らしの方
が何かと都合が良いでしょう。実際、これまでだって似たようなものでしたし。
今回に限ってまともに居を構えることがどうにも腑に落ちなくて」


「あのなぁ、さしもの俺も、不特定多数の野郎が出入りするような場所でいつま
でもテメェの女寝起きさせるほどめでたく出来てねーですよ。……それに、コレ
は割りと重要なんだけど」

 


互いの間に存在する無粋な距離を詰め、少し体重を掛けた程度では開かぬドアへ
と片肘をつくようにして己へと覆い被さった彼は、無防備な耳元で小さく、けれ
ども確かな熱を孕んだ声でもって甘やかに囁いた。

 


「―――――この宿の壁の薄さは、何かと不都合なんだわ」

 

 

 


綱吉は今度こそ悲鳴を上げた。

 

 

 

 

 

END

 

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