忍者ブログ
<<08/123456789101112131415161718192021222324252627282930/10>>
[614]  [613]  [612]  [611]  [610]  [609]  [608]  [607]  [606]  [605]  [604
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

~ 注意書き ~



この話は、

Day after the trip- 奥州編 -

のIFネタとなっております。
舞台はBASARA界ですが、本家キャラは面白いほど出てきませんの
で、それを許容することの出来る方のみ、しばしお付き合い下さい。



Day after the trip
- 奥州編 -
●○●○● もしも、ツナ様がうっかりオリキャラと絡んでいたら ●○●○●
- ⑰ -
(サブタイ、山神様の捕らわれ人。お相手は黒脛巾組の忍ですが、諸事情により、
大分忍らしさを失っております。絡め手ならぬ『かわし手』を得意とする厄介な
タイプで、そこはかとなくエロい御仁です。例の如く本番はありませんが、オリ
キャラが相手となりますので、閲覧の際は充分お気を付け下さいませ)
 
 
不可視の壁の内側に見慣れた姿を見付け、綱吉は思わず苦笑した。
此処まで来てしまえばもう、あと四半刻も掛からずに帰宅を果たすことが出来る
が、彼はその僅かな時間も惜しんでくれたのだろう。
恋人でも、ましてや夫でもない男のひたむきな想いを前に、けれども嫌気が差す
よりも先に安堵の息を洩らしてしまうのは、自身が思う以上に彼との生活が肌に
合っているからだろう。
 

「―――――おかえり。怪我はないかい?」
 

己に代わり、市女笠を外しながらの柚子彦の問いに、『そんな、合戦場に行った訳
じゃないんですから』と、綱吉は小さく笑った。
 

「村長とはちゃんと話をしましたし、支援物資も受け取ってもらいました。炊き
出しの粥が村人全員に行き渡るのを見届けて抜けて来たんです。道中、何かと遭
遇したということもありませんでした。怪我なんてしませんよ」

「そう。良かった」
 

さも当然のことのように近付けられた癖のない顔に、思わず目を閉じ掛けたが、
綱吉はハッと我に返り、辛うじて残されていた隙間へとすかさず自身の手を差し
込んだ。
指の腹に当たる少し冷たい唇の感触に、額に嫌な汗が滲む。
 

「……無粋な真似を」

「いやいやいやいや、何してくれてんの。んでもって何馬鹿なこと言ってんの。
アンタどんどん行動がエスカレートしてますことよ?」

「えすかれーと?……あぁ、増長していると言いたいんだね」

「……柚子彦さん、実は南蛮の言葉わかってません?」

「そうだね、否定はしないよ。状況と君の言動を照らし合わせれば、ある程度は
わかるからね」

「さいですか。とりあえず、いったん離れましょうか。この距離は流石に障りが
あります」
 

そこで『あぁ、帰って来たんだなぁ』などと思ってしまう辺り、障りも何もすで
に手遅れなような気がするが、自身の精神の安寧のためにも迂闊なことは口にし
ないでおく。
とにもかくにも、己の訴え自体はいっそ拍子抜けするほどあっさりと受け入れら
れ、互いの間に健全な距離が作り直された。
―――――が、その代わりと言わんばかりにこちらへと差し伸べられた手に、綱
吉は馬鹿正直に眉を顰めてしまう。
 

「……俺達、恋仲でも夫婦者でもありませんよね?」

「残念ながら否定は出来ないけれど、そのどちらかでなければ手を繋いではいけ
ないのかい?」
 

逆にそう問われてしまえば、口を噤まざるをえない。
散々迷った末に、自身の手を消極的に絡めた綱吉は、驚くほど柔らかな笑みを浮
かべた彼と二人並び、静かに歩き出した。
 

「―――――喜作の、村ですが」

「うん」

「駄目、ですね。自分の足で色々と見て回りましたが、冬は越せません。村長も、
本来あるべき正規の支援物資については触れもしませんでした。御山の入り口付
近にあった野草はほぼ採り尽してしまったようですし、井戸水も直に底をつきま
す。このまま救済措置が間に合わなければ、初雪が降る頃には村はなくなるでし
ょうね」

「うん」

「村から離れることになっても外に伝手がある人はともかく、こういう御時世で
すから、なかなか難しいでしょうし」

「そうだね」

「……仮定の、話ですけど」
 

硬く大きな手を握り返す自身の手に、今少し、力を込める。
 

「村の人間は、善良なように思えました。もちろん、全員と言葉を交わした訳じ
ゃありませんから確実とは言えませんが、おそらく大丈夫です。彼等が暴走しな
いよう、どうにか上手く立ち回ります。―――――俺が、あの村に手を貸したい
と言ったら、柚子彦さんは怒りますか?」

「怒らないよ」

「……本当に?」

「酷いなぁ、怒る訳ないじゃないか。落ち武者の隠れ里だというならまだしも、
彼等は紛うことなき奥州の民だからね。ただ、伊達の御殿様を差し置いて、俺如
きが勝手に動いていいものか―――――」

「もとはと言えば、家臣の管理不行き届きが原因なんです。礼を言われるならま
だしも、怒りを買うことはないでしょう。……まぁ、それは願望なんですけど。
それとも、伊達の御殿様はそんなに了見が狭い御方なんですか?」

「……さぁ、どうだろうね」
 

己の記憶の中にある政宗はと言えば、野性味溢れる男性的な美貌に反して存外女
々しく、子供っぽい部分も多々見受けられたが、国主としての器はなかなかのも
のであったように思う。
もし仮に、己の存在共々、麓の村への支援が明るみになったとしても、少なくと
も頭ごなしに非難されることはないはずだ。
甘やかな劇物そのものであるこの男が政宗となんらかの関わり(そう、例えば忍
だとか)を持つ人間であることを見越しての問いに、けれども否定も肯定もしな
かった彼は、感情の波を見せぬまま小さく笑った。
 

「一つ聞かせてほしい。俺が反対したら、君はどうするつもりだったんだい?」

「『残念です』で終わらせるか、もう少し粘ってみるか、そのどちらかですね。と
りあえず、貴方の意向を無視するつもりはありませんよ」

「……嬉しいことを言ってくれる。―――――そうだね。少し、時間を貰ってい
いかい?支援をすることになったらまず間違いなく俺達自身に皺寄せがくるし、
御山の実りをこちらの都合で外へと持ち出す訳だから、程度というものを慎重に
探る必要がある。即答は出来ないよ。二、三日のうちには答を出すから、考えさ
せてほしい」
 

 
 

……まぁ、それが普通だよな。
 
 
 
 
 

END

 
PR
忍者ブログ [PR]

design by AZZURR0