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~ 注意書き ~



この話は、

Day after the trip- 奥州編 -

のIFネタとなっております。
舞台はBASARA界ですが、本家キャラは面白いほど出てきませんの
で、それを許容することの出来る方のみ、しばしお付き合い下さい。



Day after the trip
- 奥州編 -
●○●○● もしも、ツナ様がうっかりオリキャラと絡んでいたら ●○●○●
- ⑮ -
(サブタイ、山神様の捕らわれ人。お相手は黒脛巾組の忍ですが、諸事情により、
大分忍らしさを失っております。絡め手ならぬ『かわし手』を得意とする厄介な
タイプで、そこはかとなくエロい御仁です。例の如く本番はありませんが、オリ
キャラが相手となりますので、閲覧の際は充分お気を付け下さいませ)
 
 
戦国時代に、哺乳瓶などという気の利いた物があるはずもない。
よって、赤子への授乳は、呆れるほど手先が器用な同居人が焼いてくれた急須を
利用することにした。
湯呑み二杯分の湯を一度に入れることが出来るほどの大きさで、デザイン自体は
さして珍しくはないものの、通常の物よりも細く長めに作ってある注ぎ口が、赤
子の小さな口にも収まりがいいと判断したからだ。
その急須と、注ぎ口に巻き付ける予定のガーゼを煮沸消毒し、授乳の準備を整え
た綱吉は、低温殺菌した牛乳を急須へと注ぎ、ぐずる赤子をあやしながら始終そ
わそわとしていた母親達へと託した。
 

「一つしかなくて、申し訳ないんですけど。牛乳でしたら充分な量を確保するこ
とが出来ましたので、小さな子から順に与えてやって下さい。俺は炊き出し組の
方を覗きに行きます。後で届けますので、お母さん達は此処で待っていて下さい」

「し、しかし、茶々様を働かせて私達だけ休む訳にはっ」

「そういう科白は余力がある時に言うものですよ」
 

素っ気ない物言いではあったが、けれどもぬいは再び涙ぐみ、他の母親達と共に
深々と頭を下げた。
感謝や敬愛といった、人間に向けるものとして別段おかしくはない感情ならとも
かく、いっそ信仰心すら窺えるその態度はなかなかどうしてクルものがある。
肩を落としながら外へと出た綱吉は、力のある男衆が急いで脱稃した白米を確認
してから、遅ればせながら『清二』と名乗った村長へと声を掛けた。
 

「胃に何も入っていない状態が続いていたのなら、粥にした方がいいでしょう。
鮭とばを細かくして入れれば、塩気も出て充分美味しく頂けるかと。竹筒の水も、
皆さん、口を湿らせる程度で済ませて下さったので、粥に使ってもまだ余裕があ
りそうですね」

「あ、あの、本当に宜しいのですか?白米だなんて、農民の口に入るような物で
は……」

「そうは言っても、もう持って来てしまいましたしねぇ。城下辺りに持ち込めば
かなりの値が付くのは承知していますが、だからこそ、代価として成り立ちます
し。あまり気にしないで下さい」

「はぁ……」

「そんなことより、大釜の準備は……あぁ、簡易竈の設置まで終えてるんですね。
飢饉の前は、祭か何かで炊き出しでもしていたんですか?」

「えぇ。今年はそれどころではありませんでしたが、毎年、収穫祭で炊き出しを
していたんですよ。よく作っていたのは牡丹鍋や芋煮ですが」

「牡丹鍋!アレは美味しいですよね。最近食べる機会に恵まれまして、俺の好物
になりました」
 

思わず声を弾ませると、顔色の悪さが際立つ顔に、それでも安堵の色を滲ませな
がら、彼は『そうでしょう、そうでしょう』と頷いてくれた。
そこで『来年は必ず釜を囲もうと、皆と話していたんですよ』と続けないのは、
今回、ここで腹を満たすことが出来ても、いつになく厳しい冬を無事に越せると
は思っていないからだろう。
事実、この様子では、上手い具合に領主の横領が発覚し、新たな支援物資が届く
まで、この村はもたないと思われた。
己が提案した通り、粥を作るよう指示を出し始めた彼の背中を眺めながら、綱吉
は静かに目を細めた。
 
 
 

この村が滅ぶか、はたまたギリギリのところで踏み止まるかは、『囲い』の中で
生きる自分達次第だとわかってはいたけれど。
 
 
 
 
 
END
 
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